メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』感想(旧ブログから転載)

フランケンシュタイン
メアリー・シェリー 著 / 小林章夫 訳
https://www.kotensinyaku.jp/books/book113/

光文社古典新訳文庫のポイント還元実質半額セールをやっていたのでメギド72のギギガガスイベント復刻(※作中にメアリー・チェリーというペンネームを名乗るキャラクターが登場する)で熱が高まっていたこともあり買ってみたわけですが、2020年にもなって初めてちゃんと読んだフランケンシュタインの主人公に新鮮にキレ続ける人間になってしまった。

 

お話は面白かった!翻訳も超読みやすかった。

本編の後に作者の年表が載っててフランケンシュタインは作者が20歳の時に脱稿したと書かれててひっくり返ってしまった。ていうか作者自身によるまえがき(1831年版)がめちゃめちゃ良い。

 

本編はウォルトンとかいう人が姉のマーガレットに書いた手紙の体で始まるんだけどこのへんのくだりを一ミリも知らなかったので最初誰!?となった。

ウォルトンが航海先で見つけた友達になりたい自分好みの人(死にかけ)がフランケンシュタインで、フランケンシュタインの物語はフランケンシュタインが死にかけの自分のことを助けてくれたウォルトンに自分の奇妙な人生を語るというスタイルで書かれています。

このヴィクター・フランケンシュタインとかいう自己愛つよつよクソ野郎がマジで何コイツ…何だコイツ……!?てかんじで半分くらいまで読みすすめるのがダルかった。

神様みたいに自分も新しい命作っちゃうぞ~☺とかいって何年もかけて頑張って制作に励み完成した命がなんか思ってたより醜いしおぞましいし…なんでこんなもの作っちゃったんだろう!?かわいそうな僕!!!!みたいなこと言う。

おまえがそのゼロ倫理観で野心に溺れて勝手に作り出したやつだろうが!創造主なら命に責任を持て!!としか思えないような行動をそれはもう悲劇の主人公みたいにとって訴えてくる。

父親や妹(従姉妹?婚約者?なんていうの…?)や弟や親友や教授にむちゃくちゃ心配かけるわ気を使わせるわ。

自己愛が強く頭が良く悲観的で精神が弱く考え方が幼稚。視野が狭い。利己的。傲慢。煮え切らない。シンプルなのにクズクソ野郎の描写の解像度が高すぎるよこの小説…。

フランケンシュタインが怪物と…というか自分の人生をやり直す機会、無くは無かったけど自分の手で誕生させてしまった怪物と真面目に向き合ったり寄り添ったり、より良い方法を考えるでもなく、もうただひたすら被害者ぶって怪物を憎むし恨むし本当にめちゃくちゃ頭はいいけど心が弱くて精神が幼稚でそれがそのまますぐ体調にも反映されるほど虚弱なんだよな…ヴィクター・フランケンシュタインに対する悪口が次から次へと溢れてきてやばい!

フランケンシュタインが作り出した怪物は創造主に見捨てられた後、なにもわからないまま姿を消し、大変な思いをして孤独に生き延びるけれど助けた相手(人間)に迫害されたりなど散々な目に遭う。

そんな中で一方的に出会ったド・ラセ-一家に対して抱いたり芽生えたりした知性(元々高い)や感情のところが切なくて愛しくて、でもウワァ絶対嫌な予感しかしない…と思って読んでたら実際酷いことになったのでアヴェンジャー化やむ無し!てかんじだった。

こんな悲しい命、Fateシリーズにもし出てくるなら絶対クラスはアヴェンジャーだろ!と思ったけどもうバーサーカーとして実装されてるんですよね。えー。

そんなわけで復讐者となった怪物はフランケンシュタインの弟ウィリアムを殺したりその罪を別の人になすりつけたりしてフランケンシュタイン一家を苦しめます。

フランケンシュタイン家のみんなに信頼されていた使用人のジュスティーヌが冤罪で捕まって裁判にかけられて、エリザベスが「この子はそんなことするような人じゃありません!」て証言してるときもヴィクターは「そうともジュスティーヌのわけがない、すべてはあのおぞましく醜い怪物の犯行なのだから」とか独白しつつ周りに何も言わないんですよ。言ったら自分が狂人扱いされるし……💦とかいって…!!!この…!!!!!!こいつ…!!!

かわいそうなジュスティーヌは冤罪で処刑されるしエリザベスは結婚式の日に殺されるし親友も殺されるし父親も死ぬしみんなあんな善人なのにマジで全部ヴィクターのせいですよ。

怪物と再会(?)したあたりが会話とかすごく面白くて、そこで怪物が今までどうやって生きてきたかも語られるんだけど、怪物は「この世でたった独りの自分にも同族がほしい」といって創造主であるフランケンシュタインにつがう伴侶を作ってくれるよう頼みます。そしたらもう姿消して二度と人の前には現れないと約束までする。

なんかもっとこうその場でぶん殴ってもいいのではってかんじなんだけど知性が高く繊細な感情を持ち人に迫害され孤独に怯える怪物はびっくりするほど譲歩するんですよね。

フランケンシュタインは自分のことを惨めな奴隷…😥とか言って嘆いてるけどこの時点で圧倒的な権力を持っているのは実は怪物ではなくフランケンシュタインのほうだし…。

悩んだ末フランケンシュタインは怪物の望みを聞き入れます。
ところが約束通りとはいえ嫌々途中まで作ったその二体目をなんか気分が盛り上がって(??)壊してしまう。

それを見た怪物(約束通りずっと姿を消してゴミみたいなごはん食べて寒さ凌ぎながら同族が完成するのを待ってた)は激おこになる。そりゃそうだよ!!!!

実際つがわせるための二体目を作ったところで本当に怪物の望む結果が得られたかどうかという部分に関してだけは私も読んでて疑問だったからなんとも言えないんだけど(随分と幼稚でセンチメンタルで身勝手な願いだとも思うし二体目には意思ないのかよ!?)そもそもなんでそんなことになったかと言ったら野心や名誉欲のためにゼロ倫理観で怪物を作ったフランケンシュタインがクソ野郎なのでおまえそんな守れない約束をするんじゃねえ!!!!という気持ちになってキレました。
本当に全編通して主人公にこんなにキレたり呆れたり引いたりするのも疲れるんですが。

なんやかんやの末にフランケンシュタインはウォルトンに看取られて死に、復讐を果たした怪物もまた闇に消えていきます。
(自分の友達になってほしいというウォルトンに対して子供の頃からの知り合いじゃないと本当の親友にはなれないもんじゃん??みたいなこともっともらしく言うとこもホントさいてー!死の間際まで最低記録更新野郎)

 

最後のシーン、怪物のセリフを青空文庫にあるやつからちょっと引用します。

 

【青空文庫】フランケンシュタイン 宍戸儀一訳
https://www.aozora.gr.jp/cards/001176/files/44904_35865.html

「しかし、おれはまったく悪者だ。おれは愛らしい者や無力な者を殺した。罪もない者を眠っているあいだに絞め殺し、おれをはじめ生きているどんなものも傷つけたことのない者の喉をつかんで死なせた。愛と称讃に価する人間のうちでも選りぬきの手本であるおれの創造者を、苦境におとしいれ、こんな取りかえしのつかない破滅にまでも追いつめた。その人が、ここに伸びているのだ、死んで血の気がなくなって、冷たくなって。あんたはおれを憎んでいるが、その嫌悪は、おれが自分に対してもっている嫌悪とは比べものにならないよ。おれはこれを実行しに自分の手を見、こういうことを思いついた自分の心を考えて、この手がおれの眼を掩い、そういう考えにもう二度と悩まされなくなる刹那を、しきりに望んているのだ。
「おれがこのさき悪いことをしやしないかという心配は、無用だよ。おれの仕事はどうやらかたずいたのだ。おれの生涯にきりをつけて、どうしてもやっておかなければならぬことをやりとげるには、あんたやそのほかの人の死は必要じゃない。入用なのはおれ自身の死だ。おれがこんなように自分を犠牲に供することをぐずぐずしているとは考えてもらいたくない。おれは、おれが、ここまで乗ってきた氷の筏で、あんたの船から離れ、地球のいちばん北のはてまで行ってから、自分の火葬の薪の山を集めて、このみじめな体を燃やして灰にしてしまうのだ。おれのようなものをまた造ろうという好奇心の強い穢らわしいやつが、おれの死骸から手がかりを得たりしないようにね。おれは死ぬつもりだよ。

 

怪物かわいそうすぎない!!!!?????
いやフランケンシュタインの周りの人たちのほうが巻き込まれて死にまくって勿論かわいそうなんだけどさあ…。

すごいケジメつけて自分の責任を果たそうとすることに関しては創造主の数千倍は優れてると思う。

怪物…幸せになってほしかったなあ……名前さえつけてもらってないんだよ…。こんなにも酷い孤独の話ある…??怪物が何をしたっていうんだ…人類は愚か……!!!ヴィクター・フランケンシュタインはクソ野郎!!!!

なんかこう〜…たとえば助けた子供とか、ド・ラセー一家に受け入れられる・受け入れてほしい・幸せになってほしいという気持ちから生まれた怪物の二次創作が形を変えて今も世に沢山あるんだろうな〜〜〜ということを思いました。私もなんか描こう…。

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