合本版を読みました。
あまり親しみのない異世界ものです。
わりと最近のだと『JKハルは異世界で娼婦になった(平鳥コウ)』がクリティカルヒットした記憶。
日帰りクエストの発行は1993年。
ちなみに『彼方から(ひかわきょうこ)』が1991年。
『ふしぎ遊戯(渡瀬悠宇)』と『十二国記 − 月の影 海の闇(小野不由美)』が1992年。
『魔法騎士レイアース(CLAMP)』が1994年。
比較的のんきなエリ視点の最初の印象はどちらかというと『ねこめ〜わく(竹本泉)』(1991年)が一番近いかも。
■1巻■なりゆきまかせの異邦人(ストレンジャー)
エリ→主人公。女子高生。
レックス→エリを召喚した魔道士。
クルーガー→ファインネル王国の王子。
ロッドゥェル→レックスの師匠。魔法剣を使う老将軍。
ベヅァー→白いギオラム・バスカー。結界実験の塔のひとつを担当している。
主人公エリの良くも悪くも普通の女子高校生っぽさがすごく良い。
普通というには元気と度胸がありすぎる気もするけど、こういう図々しさとふてぶてしさのある女の子の話は読んでて元気が出てくる。
エリ視点だと最初は結構ノンキな世界観なんだけど、まあ普通に大変なことになってる世界。
実世界から持ってきた香辛料でなんやかんやするのは世界のバランスが崩れないか不安になりつつ、現代の知識や物質で無双ぽいことするシチュエーションはズルくて面白い。
一番興奮したのは塔でファーダルグと戦うロッドゥェルのシーン。以下引用。
──なぜ、手を出した!?
のどもとまでせり上がったその叫びを、ロッドゥェルは、それでもなんとかおし殺す。
「……いや……わしは大丈夫じゃ……よくやってくれた……」
「そんな……たまたま、です」
まだ若いその弓兵は、ロッドゥェルのことばに、照れたように鼻の頭を搔く。
老将軍は、重いため息をひとつつき、
「……クルーガー殿たちが、上に向かっておられるはずじゃ。わしらも援護に向かうぞ」
「はいっ!」
応えてかけ出す兵士たち。
ふと、ロッドゥェルは足を止め、もはや動かぬファーダルグに視線を落とし、
「……お前さんとは、こういう決着のつけかただけは、しとうなかったな……」
彼はぽつり、とつぶやいた。
バリつよの老将が実力者である敵と命がけで戦ってるうちに楽しくなってきちゃって、ピンチの際に自分を援護して敵にトドメ刺してくれた若い部下に対して「なんで勝負の邪魔するの!?」て一瞬思っちゃうけどそのアホらしい言葉を飲み込む場面です(細かすぎて伝わらない萌えポイント)
レックスが実はわりと早いうちから腕時計を外せてたところも好き。
レックス、苦労の多いポジションだけど妙にしたたかなところがあるし、覚悟さえ決まれば強くなれそうなかんじだよな〜。
師匠に負けず劣らず、年食ったら結構狸っぽい奴になるんじゃないだろうか。こんな世界だけど長生きしてほしい。
観光気分で遊びに来てただけなのに、元の世界に帰る手段が失われたときの絶望感は半端ないですね。
しかも「召喚された現代人に実は秘められたウルトラパワーがあって…」とは一切ならず、剣は重たいし、目の当たりにした戦争はめちゃくちゃ厳しいし、地に足がついているというかひたすら泥臭い。
泥臭いんだけど、文章のテンポとかキャラクターの魅力なのか軽快で読みやすいんだよな。これはスレイヤーズにも通じるところだと思うから作家性なんだろうな。
転移のオーブを使ってギリギリの勝利をおさめるけどベヅァーはまだ生きてるらしいし、めっちゃ不穏。
エリの「何もできないけどなんでもできる気がする」、好き。
■2巻■困ったもんだの囚われ人(プリズナー)
二作目。長期休暇(夏休み)の大冒険。
異世界で敵対種族に捕まって奴隷オークションにかけられるシチュエーションがこんなギャグに振り切れてるのすごいよ。
エリとは違って嫌な感じの商人メゼに高値で競り落とされた上に新人奴隷いびりに遭っても耐え忍ぶ王族のクルーガーには普通に萌えました。こんなんエッチすぎるでしょ(最悪読者?)
エリをお安く競り落とした(…?)ラーディーがヘンテコ学者馬鹿というかんじの良いキャラで、出会いもだけど二人の生活がめっちゃ面白かった!
ここらへん、エリの性格もあるけど物語のストレス値コントロールみたいなのが効いてるんだろうな。
外を歩くときは顔の半分を隠しているラーディーって何者なんだろう?と思ってたら、白輝帝ゾムドの学友らしい。
二人の前でエリが現代知識披露するところなんかは最近の異世界ものっぽい!(イメージ)と思った。
ていうか現代日本、市民一人ひとりにこれだけのレベルの教育が行き届いてるのってマジですごいんだよな……と改めて考えさせられるなどした。
スレイヤーズでも思ったけど、人類の蓄積されてきた知恵とか知識に対するナチュラル敬意が感じられてそういうところが好きだな。
驕れる強者が見下していた存在に打ち負かされて以来相手のことを夢にまで見て病んでくシチュエーション大好物なので精神的に追い詰められてくベヅァーもクソ迷惑でマジで最悪だけど可愛くてよかった(何もよくないが……)
町中でエリと目が合ってもまたトラウマによる見間違い(幻覚)だと思ってるの気の毒で面白い。
エリの名前をきちんと覚えていないラーディーのおかげで、家まで来てまた会ったのに結局一致しないし。
でも普通に考えたらそんなところにいるわけないもん仕方ないよね。エリ、おもしれー女。
さすがにここまでマークされた状態でエリがベヅァーに勝つのは無理だろと思って読んでたけど普通に倒してしまったのでエリの強運と度胸がすごすぎる。
しかしまだ生き延びているし、どうなるんだろう。
噂を流して捕まってる人たちを一斉蜂起させるというエリ&クルーガー救出作戦はワクワクしました。
度胸のついたレックスは門番のギオラムを普通に焼き殺しているのでびびる。
今回ラーディーとかゾムドの描写もあって、ギオラムも人間とあんまり変わらないっぽい雰囲気になってきたので和平の道とかも見えてきたのかなあ…。
■3巻■見物気分の旅行人(トラベラー)
2巻に出てきて「え〜この人メッチャいいじゃん〜」て思ってた変人学者系ギオラム(エリをオークションで競り?落とした)のラーディーさんがまさかの絶世の美女キャラクターだったのでウオオオ大興奮してる
二次元ルッキズム拗らせ奴には効く描写だ〜!!!!!それでお顔を半分隠していたのか……助かる……………ありがとう…日帰りクエストの感想は全巻読んだらまとめてブログに上げる予定でチマチマ読んではチマチマ書いているんだけど、あまりにも意表をつかれたので思わず叫びにきました
これはあまりにも自分にとって都合のよい展開が繰り広げられていることが信じられなくて思わずマストドンに駆け込んだときの書き込み。
面食いのそしりを受けたり、バイザー隊長もおもしれ〜(笑)ことになっててウケました。
ていうかゾムドがラーディーのところにストレス解消愚痴りのために足繁く通っている理由も深読みしちゃうね☺(異性愛規範どっぷりカップリングお見合い読者)
でもゾムド、辺境に飛ばされた中間管理職ってかんじで上司(身内)にも部下にも恵まれてないのがありありと伝わってきて可哀想なので、せめてラーディーみたいな友達がいてくれてよかったよね…。
エリの異世界観光が物見遊山であるうちは微笑ましく見てられるけど、現実逃避ぽさが強くなってくるとハラハラしますね。
そりゃ命のかかった戦場での高揚感にまさる感動なんて普通に暮らしてればめったに無いだろうけど、明らかに勉強が嫌すぎることが主な原因なんだもんな。
ここらへんはふしぎ遊戯にも見られたので時代性なのかな〜と思う。
でも抜き打ちテスト22点はさすがに厳しいカモ…!
3巻、最低最悪だしクソバカ迷惑でしかないんだけど、地味にベヅァーの描写が一番いいまであるんだよな。
認知が歪んでるのに本人の中では虚言や妄言が真実になってしまっている狂気の描写に筆が乗りすぎててむちゃくちゃ面白い。
エリへの執着、もはや「それは恋だよ♥」って囁いてやりたいな〜(ギャハハ)とか無責任な感想を持って読んでたんだけど、
白い竜人ベヅァーは、すでに、エリの姿を見いだしていた。
今、ベヅァーの目の前に、彼が長い間、その姿を求め続けたエリがいる。
かすかに足をふるわせて、なすすべを失くしたかのように立ちすくんでいる。
ゆがんだ、恋慕にすら似た感情が、白い竜人の胸を満たした。
──そうだ──
ゆっくりと、エリに向かって右手をかざす。
──私はこの時を──このエリを殺す瞬間だけを待っていたのだ──
まさに「ゆがんだ恋慕」とかいうワードが出てきたので手を叩いて喜んでしまった。
やってること最悪だけど眼差しが良すぎるー!!
今回は見分けもつくようになっちゃってるし油断も慢心もなく、100%本気でエリに対峙するベヅァーにどうやって勝つんだろう!?とドキドキ読んでたらまさかのラーディーがあっさりなんとかしてくれたのでびびりました。
寝ぼけたラーディーが強いのか狂気のベヅァーがしょぼいのかわからないけどなんとかなってよかったよかった。
バイザーの筋書きで救世主に仕立て上げられて満更でもないどころか意気揚々と見事なアジテーションを披露するエリは肝が太すぎるし、カメラのフラッシュ攻撃をやってみたくてあのシチュエーションでそれを実行するのもさすがに肝が太すぎるとかいうレベルじゃないだろおもしれー女!!!!!になりました。
ベヅァーに唆されて貸し与えた兵の2/3を失った黄金王ジグラドも、人間の街を襲ってた兵達もまあまあ気の毒だったね。
ベヅァーとベヅァーの狂気に振り回される描写が本当にリアルなんだよな…。
まあ自分できちんと学んだり考えたりすることもせずに誇りがどうとかみたいな価値観にばかりすがって強者に従って暴れてる時点で自業自得なような気もするけど…(そんな…)
ジグラドに至っては最初からわりと自業自得だと思っていたのでエピローグでギャハハ!!!!て笑ってしまった。性格が終わりすぎ!
■4巻■間違いだらけの仲裁人(メディエター)
>”あちらの世界ならいざ知らず、今の日本でマントなど着てうろついている者など、警察に通報されても文句が言えないくらい怪しい。” – “【合本版】日帰りクエスト”著者: 神坂 一, 鈴木 雅久
https://a.co/3KDIBC3
K2と同時進行で読んでるせいで事故って無駄にウケてしまったところです。
思わずTwitterに駆け込むなどした。
サークレットの通訳機能で会話可能な設定とか、ラーディーの幻術とかもだけど、エリが世界を行き来するのに古毛布が使われてる理論も面白かったな。
バイザーのことばを遮って、抗議の声を上げたのは、意外にもレックスだった。
「違う――と?」
ややムッとした顔で問うバイザーに、レックスはきっぱりと、
「ええ。バイザー殿は、勘違いをなさっております」
「ほほぅ。どんな勘違いだと言われるのかな? レックス殿?」
「バイザー殿の言われようだと、エリさんが役に立ってたように聞こえます」
どっ。
エリを除く全員が爆笑した。851ページより引用
エリをパジャマ姿のまま会議に連れてこうとしたり、レックスも大概ボケボケかつふてぶてしいところがあって面白い奴だ。
*
しかし4巻、なんか意外にもゾムドに色々持っていかれてしまった。
言われてジグラドは小さく唸る。
たしかにその通りではある。が――
だからこそ、ジグラドはその案が気に入らないのだ。
昔からジグラドは、なんとはなしに、この弟が苦手だった。
もともとゾムドを、半ば無謀とわかっている結界実験の責任者にしたのは、彼をあまり重要な職務につかせたくなかったからである。
むしろ、弟をつまらぬ地位に追いやることを狙って、結界実験の実行を許可した、と言っても過言ではないだろう。647ページより引用
これがさあ、
たしかに彼は、弟を内心うとんじていた。
それがゆえに、結界実験などというものの責任者たる地位を押しつけた。
しかし――
それが結局、弟の命を奪うこととなるとは――
ジグラドはこの時ようやく、自分が弟をうとんじてはいたものの、決して憎んではいなかったことに気がついた。846ページより引用
これだよ!?!?
か、可哀想〜〜〜〜!!!!!!☺☺☺
しかも和平交渉の席で人間に殺されたんじゃなくて、同族のベヅァーに殺されたって聞いた時のジグラドお兄ちゃんこんなのマジで「ハア?????????」だよね。
いや兄弟BLの香りに興奮してる場合じゃなく、ゾムド死ぬとは思わなかったので普通にめちゃくちゃショックでした。
ラーディーのことやっぱ結婚したい気持ちもあるタイプの好きだったんだな…。
友達を失ったラーディーも可哀想だよ…。
ラーディー、エリともお別れだし。
でも結界実験をやめるという落とし所は妙に現実的で唸らされた。
双方の思惑がこんがらがってるけど、このまま休戦なってもいいじゃん!!!て思いつつ、ゾムドやラーディー以外のギオラムの認識や感情を考えるとそう上手くは行かなさそうだし、3巻でベヅァーに村を焼かれた人間の気持ちを考えてもこんな状態での和平はすぐどこかに綻びが生まれそうだもんな…あ〜〜〜不可抗力ていうかベヅァーの乱心による責任者死亡で結界実験の終了からのギオラム達が引き上げてくっていうのは本当にそれしか落とし所がなさそう〜〜〜…!!
なんかこう、やけに地に足がついてるんだよな…。ほろ苦すぎる…。
ほろ苦いんだけど、エリの呑気さとか元気さでバランス取れてるんだよね。
ギオラムとの会談に自分も行く!!!!って言ったのだってバイザーにムカついたからとかいうミクロな理由だし、そういうところ好き。
クルーガーがエリにプロポーズしたの、ロッドゥェルじゃないけど、殿下がそこまでエリに惚れ込んでたなんて知らなかったので私も驚きました。しかも振られたと勘違いして一人で気まずくなってるし。可愛いね。
クルーガーに誘われてピクニックだ〜!て他の人たちもワイワイガヤガヤ誘うエリも可愛くてよかった。クルーガーとレックスはまあ気の毒ですが…。
休戦交渉の会談にエリが呼ばれることになったのメチャクチャのピタゴラスイッチで笑った。
登場人物みんながみんな色んなことを少しずつ勘違いしてるのにこの絵に持っていかれるの出来すぎで面白かった。
エリだけを憎むことはやめて世界のすべてを憎悪するようになったベヅァーさんマジでクソバカ迷惑すぎるんで死んでもらっていいですか…?という4巻だった。
口が上手くて人心掌握に長けてて変な根性があって魔術も一流で……ロクでもないなコイツ!!!
騙されてベヅァーに協力してたくせに保身に走るバイルドもアホ&間抜けだしコイツら本当にロクでもねえ〜〜〜〜!!!!!
いやゾムド、マジで苦労してたんだろうな…同じレベルの知性と倫理観で会話できるラーディーのところで愚痴るのって恋愛感情とか抜きにしても本当に癒やしだったんだろうな…。
雪の中の戦いは能力はあっても戦闘はからっきしなラーディーや、ベヅァーに遅れを取るロッドゥェルにハラハラさせられたし、バイルドが小者だったからまあなんとかなったみたいなところはあったけどベヅァー本当にしぶとい&てごわかったね〜!?
本人が美しいと見惚れていたような銀世界の中でひっそりとした最期を迎えるの、ベヅァーがやってきた行いに対してちょっと激甘だな〜とは思った。
でも蔑んでた人間の小娘に人格と人生狂わされたオッサンの認知の歪み描写が最悪で良かったのでまあ許すか(読者様目線)
ていうか竜人族が寒さに弱くなければ人間の勝ち筋とかまったく無さそうだったし、よくおさまったな本当。絶妙な落とし所だ…。
エリの異世界訪問がつらい勉強からの現実逃避になったら嫌だな〜と3巻からモヤモヤしてたんだけど、エリ自身が「逃げるのは嫌だ」と言ってくれたのめちゃくちゃ良かったです!
あとがきにもあったけど、エリが遊び人レベル1のままで走り切ったのマジですごい。
普通どこかパワーアップとかさせたくなっちゃうじゃん!?目に見えてわかりやすい漫画的なパワーアップとかはしないけど、変化がないわけじゃなくて良い塩梅だった。
本当〜〜〜に地に足がついてて真っ当なんだよな……。教育的ですらあると感じる。
でも個人的にはそういうお話が好きなので日帰りクエストもすごく面白かった。
そういえば小娘であるエリに対して侮辱的な発言をした兵士が、クルーガーに咎められてエリではなくクルーガーに謝罪したことにエリがキレる描写とか、ナチュラル蔑視描写とそれに対するリアクションなんかも真っ当で良かったな。
竜人と人間だと種族間の差があるからちょっと大袈裟に見えるけど、人間と人間だと「あるあるあるある〜!」てなるんだよね。
こういうところ、昔の少女小説とか少女漫画ぽさがあるな〜とも思った。
これからエリがどういう人生をたどるかはわからないけど、実は大変な世界観のわりに呑気で力の抜けてるところが読んでて元気の貰える主人公で面白かったです。
絵もす〜〜〜ごく良かった!!
長編読むの向いてないから、全4巻で綺麗に完結してるというのが一番嬉しかったかもしれない。
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