横溝正史 著『犬神家の一族 – 金田一耕助シリーズ』感想

犬神家の一族

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4月にNHKBSでドラマをやるというので、気になっていた金田一耕助シリーズの原作を初めて読みました。
め、めちゃくちゃ面白かった…!!以下ネタバレだらけの感想メモ。

 

文章がとにかく読みやすくてびびります。
地の文、これ誰視点!?横溝正史!?(?)

「言い忘れてたけど〜(重大情報つらつら)」とか、「あ〜あ、ここで耕助がこの事に気付いていたらこの後の惨劇って阻止できたんだよな〜!(流れるように次の事件のネタバレをしてくる)」みたいなノリ面白すぎて好き(※意訳なので実際はもっとちゃんとしています)

依頼人の若林が殺されたところで、金田一耕助が思ってたよりずっと真面目な『探偵』だということがわかって俄然嬉しくなってきちゃった。

>金田一耕助にとって、これほど大きな侮辱はなかった。
>私立探偵と依頼人との関係は、懺悔僧と懺悔人との関係も同じことである、と金田一耕助は日ごろから考えている。

>罪深い懺悔人が、いっさいの秘密を打ち明けて、懺悔僧に取りすがるように、事件の依頼人も、余人にはもらさぬことを打ち明けて、私立探偵の力にすがろうとする。それにはよくよく相手の人格を信頼したうえでのことであろうし、それだけに、依頼された身になってみれば、依頼人の信頼にこたえなければならぬ。

>金田一耕助はいままでその方針でやってきたし、そしてまたいままで一度も、依頼人の信頼を裏切ったことはないという自負も持っていた。

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横溝正史 著『犬神家の一族』より引用

ひいひい、こんな矜持ある探偵がこれから連続殺人事件に挑むの……!?最高………ッ!!!

 

▼半分辺りで立てた予想▼

どうやらこの小説は『衆道の契』が重要ワードになるタイプのお話らしいことがわかってきて、てことは動機は相続争いではなく痴情のもつれやそれに伴う復讐!?

佐清(仮面)が松子の琴のお師匠をやけに気遣う様子などから、ここが青沼親子で、犬神三姉妹による最悪リンチの復讐に来ているのでは…?

佐清(真)が死んでるわけないんだろうけど復員兵の男がそうなのか…??なんでコソコソしてるんだろう?

もしくは作中殊更に美男美女と形容されている左兵衛と珠世は血縁関係で、そこになんらかの怨恨があり、真犯人は珠世だけど自分が殺されかけるところを何度も周囲に目撃させることで容疑者からはずれようとしている…?

それにつけても単独犯では説明のつかないことが起こりすぎる。いくつもの思惑が重なり合って複雑になっている系…?複数の単独犯?

→犯人は珠世と佐清(真)で、二人の非意図的な共犯説(知らないうちに猿蔵も巻き込まれている)を推すぜ!!!

▲予想おわり▲

読了してからの感想:そんな説を推すな!

 

■印象に残った登場人物

・犬神佐兵衛
二次元作品の美形設定が大好きなので佐兵衛のビジュアルに言及されるたびに笑顔☺☺☺になった。

『衆道』を軽率に『BL』扱いすることに関しては要審議なんですが、この小説における野々宮大弐と犬神佐兵衛の関係は個人的にはBL判定です。

佐兵衛翁にも気の毒なところが多々あったのはわかるけど、妾や妾の子達に対する所業が酷かったことも間違いないので、地の文がジジイを庇うモードになるたびに「あ゛ぁ…???」てなってた。

「若き日の犬神佐兵衛と野々宮大弐との間に衆道の契りが交わされており云々」…、

『絶世の美女』と何度も形容される珠世と、ハチャメチャすごい美貌の持ち主だった佐兵衛、財産の残し方とか考えても、ここが多分血縁なんだろうな……?そんでそうなると本当は佐兵衛は野々宮大弐とではなく、その妻の晴世とデキてたみたいな話なんだろうから、衆道とか匂わせてるだけで神主とは関係なかったんだろうな〜!とか推理しながら読んでたら、野々宮夫妻と犬神佐兵衛の関係が私の想像なんかより数倍淫靡なエロ小説で、そこは大変良かった。
良すぎてエロゲーの話しか出来なくなってしまった。貞操観念とか古臭すぎるけどそういった時代背景などを考えた上でエッチすぎる…。一番印象に残ってしまった…エッチだ……。

・野々宮珠世
すみませんめちゃくちゃ疑ってました…!!!!!あんまり美女美女言われるものだから、所謂『ファム・ファタール』系犯人なのかな…?とか、佐清(真)への叶わない愛などを拗らせて暴走してる系…?とか。

犯人でもなんでもないということがわかってみると、ひたすら酷い目に遭いまくってるだけなので、あまりにも気の毒すぎる。
「好きな人が生きて帰ってきてよかったね…」くらいしか言えることがない。
幼い頃から佐清に直して貰っていたという、佐兵衛翁から貰った時計のエピソードが好き。
幸せになってほしい。

・猿蔵
舞台装置みたいな最強ガーディアン。
縛られてる佐智をぶん殴って放置して帰宅したの絵面がシュールすぎて笑ってしまった(笑うところ???)
あやしげな挙動はありつつ、珠世が犯人だとしても意識的な共犯者にはなれなさそうだから利用されてんのかな…とか思ってた。そんなことはなかった。最後のほうの印象が薄い。

・犬神佐武、佐智
ポジション的な問題もあるけど、相続争いにおける醜い部分に加えて性欲とか名誉欲とか支配欲とか丸出しにして殺されたので死んでもあんまり気の毒感が無く、「まあ…、殺されるよね………」みたいな奴らだった。
特に佐智は小夜子さんにも手出してんじゃねえか!!!!!という、死んでからもクソ野郎記録が更新されたのですごい。

・『佐清』
え〜もう全然わからん…推理小説で顔が……、という場合、十中八九入れ替わりトリックなんだけど手型合うじゃん…!?だとしたら本物がいるはずで、じゃあいつ入れ替わったんだ?入れ替わってる人間が青沼静馬だとして、その理由と目的は何???と混乱した。
明かされてみると全てに納得できる理由だったのでなるほどな〜〜〜〜!?てなった。

母親である松子も菊乃も完璧には気付かなかったそうですが、恋のパワーで珠世だけが佐清が本物かそうでないかに気が付いていたそうです。すご。

・犬神佐清
犬神家の中にもこんな普通の好青年がいるんだ……!?でもそのせいでしんどい思いをしまくっている。可哀想。幸せになってほしい。

戦場で出会った静馬との関係が、これからもっと良いものになる可能性もあったのに………、犬神佐兵衛の遺言、カス!!!!!!!!

・大山神主
金田一耕助は探偵と依頼人の関係を懺悔僧と懺悔人とまで考えているので、こういう奴の所業を珍しくマジで軽蔑してそうなのが伝わってきて良かった(でも情報は貰うんですよね〜〜〜☺☺☺)

・金田一耕助
随分のんびり逗留してるので宿代とかってどこから出るのか気になった。
スキーのシーンだけ別の作品みたいになっててちょっと面白かった。
一般的な人にはあまり嫌われなさそうな絶妙なキャラクターだな〜と思う。
警察が私立探偵にここまでめちゃくちゃ協力的なの、今読むと結構新鮮だ。
何歳くらいなんだろう?

私立探偵としての『矜持』があるのに、金田一耕助ってこんな間に合わない系の事件にいっぱい関わってるんですか…?そんなの酷セクシーすぎる!(悪趣味オタク!!!)

 

ていうか見立て殺人、第三の殺人の『斧』の絵面だけは有名だから知ってたけど、これそんなシチュエーションだったの!?もはやダジャレじゃん!!!!!!
これ読むと佐清ってカタカナで書きたくなっちゃうな。横書きだけど書いちゃお。スケキヨ。

ちょっと面白いのズルくて笑ってしまったんだけど、犯人も一時間かけて必死で考えたらしいのでなるほど確かにそんなかんじのクオリティだわ…!てなった。
普通に斧で頭かち割るとかのほうがよっぽど楽そうだけど、見立て殺人の予防に斧っぽいものは全部隠されちゃってたというのも気の毒(?)だったな。

しかし目の前で自害する犯人も止められず、金田一は本当に『間に合わない』探偵なんだな〜〜〜〜〜〜!!!!!🥳

 

昔から金田一少年の事件簿は読んでいたんだけど、金田一耕助の「間に合わなさ」というか、殺人がたくさん起きて、最後に残った謎をみんなに話すためだけに存在する物語世界における機構としての探偵ぽさの再現性というかがめちゃくちゃ高い漫画だったんだねあれ……。

犬神家の一族「金田一少年で見た概念のやつ!!!!」がいっぱい出てきてそこも面白かった。
でもこの一作に濃縮されてて良い濃さではない。
傑作すぎる。
犬神家の一族で『犯人たちの事件簿』が見たい!と思いました。

心底からの悪人が存在したわけではなく、複数の欲望とか思いやりとか復讐とかやるせなさの入り乱れた思惑と偶然と偶然と偶然の積み重ねで起きてしまった悲劇なので大変虚しい事件。
そのわりにむちゃくちゃ体力を使うトリックが多くて大変そう。

いややっぱ犬神佐兵衛の遺言がカス!!!!!これに尽きるんだよな。
遺言だけでなく妾達と娘達への接し方にも問題があるし。人は…愚か!!!!!!

ここまでやっておいて最終章のタイトルが「大団円」なの、面の皮が佐清マスクだと思いますよ。

 

予想以上にめちゃくちゃ面白かったのでシリーズの他のも読みたいな〜。

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