小説『霊応ゲーム』感想

パトリック・レドモンド(著) 広瀬 順弘(翻訳) ハヤカワ文庫NV
『霊応ゲーム』

https://amzn.to/46Ud4jv

セールの時に買ったきり積んであった一冊なんだけど、夏も終わるし、怖そうな本でも読もうかな♪と思って手に取った本です。

すごく読みやすくて面白かった。
嫌すぎる話。ホラーとかオカルト系のジャンルにもイヤミスみたいな名前とかってあるのかな。なんかそういう小説。意外と私は好きでした。
続きからネタバレいっぱいしてる感想。

最初、タイトルの雰囲気からして「おばけが出てくるホラーかな!?」とか思ってたんだけど、途中からどんどんオカルトサイコサスペンスっぽくなってきて、最終的に派手に人がいっぱい死ぬ系だったんだけど、オチのぼかし方は怖くて良かったと思う。

もう途中からずっとニコラス(とジョナサン)応援上映状態で「がんばえー!まけるなー!」てなってた。
頑張ったよねえ二人とも…。友情と勇気がすごい……。だからこそ悲しい…。


なにげなく調べてみたところ、BL情報サイトのちるちるにもページがあって「ああ…」てなったんですけど、BL的な描写が結構出てくるんだよね。

しかし、これを「BLですよ♥」とオススメする奴は人の心が無いかも!!と思ったので一応言っておくと、確かに一部は本当にBLと呼んで差し支えのないものなんだけど、時代背景と舞台的に「……」なのと、本筋には支配執着共依存モラハラDV的な男男関係(リチャード×ジョナサン)が執拗なまでに描写されているので、苦手な人は気をつけてほしい…。

私はリチャード×ジョナサンみたいな関係を「素敵なラブラブBL」としてお出しされると「ウッ……」てなりがちで苦手なんだけど、この話に関しては良くないということにすごく自覚的だと思えたので、二人の最期まで含めてそこは好きかもしれない。
どう見ても加害!!!虐待!!!!みたいなやつに関して、「形はイビツだったかもしれないけど、それでも誰々は君のことを愛していたんだ」みたいなこと言いださないのも自動的に高評価になっちゃうんだよな…。
倫理的に「良くないこと」を「良くないもの」としてお出しされると…嬉しい!!!


リチャードは所謂サイコパス的な特徴をかなり色濃く持ったキャラクターなんだけど、彼は子どもとして被害者の顔も持っているため、最後まで悲しくてやるせない嫌な気持ちになる。
リチャードくんはリチャードくんで気の毒な境遇なんだけど、まあジョナサンくんからは手を引いてもらって………というかんじなんだよな。

死んだ人、特に子ども達のことを考えていたらジワジワ悲しくなってしまった。
ドーン!バーン!て景気のよい人死エピソードが続くとウオー!て興奮して楽しくなっちゃうけど、貧乏なのに、子どものために無理して良い学校に入れた親があとに残されたこととかも考えると更にエ〜ンてなる。
半身をあんな形で失った双子も可哀想だった…。もちろんニコラスも。


昔のパブリックスクールという小さな社会を通じて、作品のはしばしから世の中の構造に対する問いかけとか恨みつらみ、憎悪のようなものが感じられるんだけど(気のせいかもしれない)「憎しみに支配された人間の暴力のヤバさ」を自覚的にやっているので、虚しくてやるせない結末も納得しちゃうし、仲違いした人達の関係が(ひとつかふたつを除いて)特に修復とかもされないところが酷くて悲しいけど、良かった。

「許してあげようよ、歩み寄るべきだよ」みたいな、善意からであってもそういう系の言葉はどれも全然心に響かないようになってる(私の心が冷たいだけかも)

校長夫妻はまあ…よかったね…。なんだかんだでエリザベスは人を見る目はあんまりないけど、優しくて善良な熱い女性だと思う。


で、「ネタバレとかあったら嫌だな~」と思って飛ばしていた謝辞のページを本編読了後に読んでみたら、パブリックスクールに対して「”みんな”の前に出ると知性が萎縮するように仕向ける」「それが、いわゆる”男らしい男を育てること”なのだ」という『教育と社会秩序(バートランド・ラッセル)』からの引用があって、なるほどな〜…てなった。

こういう閉鎖的な環境や集団の危うさとかもだけど、かなり規範的な「男らしさ」のもたらす有害性について意識的に突っ込んで書かれてたんだな〜という納得がすごくあった。
(男性学についても本当はもっときちんと勉強しなきゃなんだけど、どうしても後回しになってしまう ヘキとかになんらかのでかめの影響が出そうなこともあり……私は弱い……)

ともあれ、再三になるけど『社会構造と世間の規範が……カス!!!!!』という気持ちが感じられたので、この最悪の読後感まで含めて私は好きです。


最後、どうするものかとハラハラしていたけどテープを燃やすのも良かったと思う。
まあ話を聞いたけど誰にも話すことが出来なくなった記者は別の意味で呪われてしまったのかもしれないけど…。

京極堂の憑き物落としが出てこない妖怪シリーズみたいな小説なので、呪いだけが残る。後味が本当に最悪。そこが良い。

なんもかんも世の中が悪い。たとえば本当に悪霊みたいなやつが彼らのゲームに呼応した結果あの惨事が引き起こされたというのはあるのかもしれないけど、全部をおばけのせいにするのは無理がある。
みんな過去に色々ありすぎなんだもん。嫌だよこんな学校!!!!


同性愛で有罪となった故人数千人を赦免 英政府(2016年10月20日)
https://www.bbc.com/japanese/37713830
そしてこれが2016年の話と考えると本当にこう…世の中……てなります。

アラン先生とポール、せめて現パロでめっちゃラブラブになっててほしい〜!!けど、現パロにしてもインモラルな部分(教師と生徒)が残りやがるので…萌えだ………!!

キャラクターがいっぱい死ぬタイプのフィクションコンテンツって現パロでみんなに幸せになってほしくなりがち(現代なら必ず幸せになれるかというと「……………………」なので結構スン……てなる部分もあるのでまあ…アレなんですけど…)

というわけで、面白い小説でした。
「京極堂の憑き物落としが無い妖怪シリーズ」、我ながら霊応ゲームを上手いこと表現できていると思うので、誰かに勧める時はこれを用いることにしよう(この紹介で誰が読むんだよ!!!!!)

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