持続可能な魂の利用 松田青子 著
https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/05/005306.html
5月になんとなく少女革命ウテナを見返していたんですけど、そしたらちょうどアンシーのセリフが引用されている本が出てるということを知って興味を持ち手に取った本です。
ウテナの最終回、何が起こったのかわからない・わかろうともしない暁生を置いてアンシーが颯爽と学園を去るところが本当にいい…居心地の良い棺の中で停滞し自分が王様でいるために他人を搾取し続けるあなたにはわからないだろうけど世界は革命されたのであなたのことは置いて私は進んでいきますの話…
午後4:37 · 2020年5月24日
▲見てた時の感想ツイートの一部▲
ストーリー自体は展開が唐突でエッてなるとこあるし(作風なのかもしれないけどむき出しのプロットっぽさがちょっとあるのでエンタメ小説的な面白さを期待して手に取ると肩透かしを食らうかも)終盤の怒涛のSF的な展開はともかくオチとしてはかなり夢物語なんだけど、それでも私には刺さるところが沢山あって面白かったです。
私はアイドルに興味が無いから逆にその部分は完全なるフィクションとして楽しめたのかもしれない。モデルになったグループとか全然わからないし。
作中の描写では性欲が一番わかりやすかった気がするけど加害欲とか支配欲とか「おじさん」がそういうものでも出来てるという感覚が日常生活において確かにあるので、描写されるエピソードの細部の感覚が現実の感覚とリンクするとわ、わかりみ~~~!!!になりました。
ナイーブで身勝手で自己中心的で誰かに立てられないと立てもしないし不機嫌を隠さないおじさん達がどれだけ甘やかされているかということが冒頭部分からすでにビシバシ伝わってくる。
逆に未成年の少女達がそういう世の中で消費され搾取され抑圧された被害者であるにもかかわらず、おじさんによるおじさんのための世界においては縮こまって自分を殺して弱さをアピールしながらでないと存在を認めてもらえないことの不思議さや理不尽さなどが変だよね~??という軽さでバンバンお出しされる。
推薦文にある通り「その革命が見える者は勇気を得られる」お話なんだと思う。
(電子書籍で買ったのであとで知ったんですけど推薦文を幾原監督も書かれています)
私はこの本を読んで「めちゃくちゃ少女革命ウテナじゃん!!!!!!!」と叫んだ。
ウテナの革命が成ったことで、何が起きたのかさえわからなかった暁生を置いて学園から出ていくアンシーをついこの前見返したばかりだったので余計にそう感じたというのはある。
こういう、リアルに存在する感覚や物事を、言葉やエピソードにして発信することの出来る人はすごいと思う。
関連して思い出したけど幾原監督は確かに存在するのに言葉にすることの難しい抽象的な概念を表現するのが死ぬほど上手いので、初めて見た時から数年経って作品を再視聴すると前に見た時には理解出来なかったことがいくつもわかるようになっててびっくりします。ピースがバチバチはまるかんじ。
アンシーの言う「女の子はみんな薔薇の花嫁みたいなものですから」とか、かつては確かに気高い王子様だったのに今は狭くて安全な棺に閉じこもって弱者を搾取しながら箱庭世界の王様みたいになってる鳳暁生という概念とかそれに対して行われる少女革命とか今見ると本当にどストレートでさえある。
持続可能な魂の利用に出てくる『おじさん』はウテナを見た人ならわりとそのまま『鳳暁生』に置き換えても支障無く読めると思う。
アイドル文化、私はいびつな構造とグロテスクな商法に対して外から見てて顔がぐしゃぐしゃに歪むタイプの人間なのでよくわからないんですけど、過去に『おじさん』に自身をモデルにした成人向け小説を書かれ、それを読みショックを受けた登場人物が、今自分が推しているアニメを死んだ魚のような目で楽しく見ながらフィクションのキャラクターはどんなに性的に消費しても損なわれることがないのかみたいな感想を抱くエピソードなどはグサリと刺さりました。
これはまた別の登場人物だけど、未成年を搾取し消費する日本のアイドルというものに対して気持ち悪さや嫌悪感を抱きつつ、推しのことが好きで応援したくてその輝きから目が離せない自分も悪しき構造に加担しているという罪悪感みたいなのとかさ…刺さるんだよな………私もフィクションに救われがちなフィクションのオタクなので(二次創作もする)
そういったものを楽しんでいる自分と向き合う度に、現実と虚構がお互いに与えあっている影響についてよく考えるし、自分のしていることが現実を生きる人に対する加害になるのだとしたらと思うと私の中にも存在している「おじさん」がバグるわけです………。
この本に書かれてる生き辛いエピソード、レディースクリニック、防犯意識の違い、ホモソーシャル的価値観、責任回避のため女性を矢面に立たせるくだり、非正規雇用の女性の立場の弱さとセクハラやパワハラ、この国に女性として生まれた時点で踏みにじられるということ、お守りでしかないピンクのスタンガン、制服に付加された余計な文脈、…書き出し始めたらキリがないんですけど、読んでいて物語としての面白さが最高潮になったのはやっぱり政治家の発言が流出したくだりです。
現実の感染症対策のどうしようもなさを見て「これは感染症対策ではなく口減らし政策なのでは!!??」とわりと本気で思っていた時期があるので無駄にわかりみがリアル~~~!!!と興奮してしまった。
下手に絶望先生を読んでいるせいでイマジナリー可符香ちゃんが「嫌だなあ、一国の首長が本当に無能なわけないじゃないですか!疫病対策ではなくこれは消極的口減らし政策ですよ!!」とかセンスの無いこと言ってきてつらい 現実のあまりの酷さに陰謀論的なものについ夢を見てしまう…(陰謀か?)
午後2:29 · 2020年4月7日
▲これは当時のツイート▲
本当に、本当に現実がこれならまだどれだけマシかと思う。いや勿論はずれクジなんて最悪なことには変わりないんだけど。
現実は××達に国を任せられることも無いし、世の中のすべてを「おじさん」達がやってきたのと別の方向にすることも難しいし、自分の魂のいち部分がどこかで自由を得られている気もしないし、私のなかにも「おじさん」は存在するし、なかなか厳しい。
そういう意味でこれはかなり夢物語なんだけど、それでも今リアルに消費されて搾取されている人(それに気がついていない人や、わかっているけど抗う気力も無い人・見てみぬふりをしている人)がこれを読むことで気づきを得たり勇気を手に入れ立ち上がるきっかけになる力のある本だと信じたいな。
男社会がしんどい ~痴漢だとか子育てだとか炎上だとか~ 田房永子 著
https://www.takeshobo.co.jp/book_d/shohin/5116001
ちなみにウテナだけではなく、ちょうどこの本を読んだばかりだったんですけど、合わせて読むと点と点が線になり面になる感覚が得られてますます面白いです。
10年後に読んだら作中出てきた発表のシーンのように、何これ古臭い~!!ありえな~い!意味わかんな~い!!とか言いたいので、なんかこう本当に世の中いいかんじになってほしいね……いや、していくんですよね。少しずつでも自分たちで。連帯していこう…!みたいなことをすごく考えさせられる本でした。
それにしても物語として評価するのが結構難しい内容だったのでいつも以上に感想がうまくまとめられなかったな…。また次に読んだら違う感想を抱くかもしれない。
著者の他作品も読んでみたい気持ち。
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