江國香織『きらきらひかる』『ケイトウの赤、やなぎの緑』感想(旧ブログから転載)

江國香織 『きらきらひかる』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/133911/

 初めて読んだけどめちゃくちゃ好きな話だった…途中の苦しささえ文章?文体?のテンポというかなんか読みやすさがすごくて小説うま……ってなって夢中で読んでしまった…。
え~~~すごい…これ……みんな好きだ…好きというか…なんだろう……三人に幸せになってほしい……。

それぞれがそれぞれに対して抱いている感情が(睦月⇔紺は恋もあるのだとして)あまりにも愛……愛では……???
笑子に求められる妻や女性としての振る舞いや子供を作れ産めという圧力が令和になっても殆ど変わってないのウケるね…(ウケない…)当時よりはまあまだ良くなってんのかなあとは思うけど。

なんかさあ…なんかメチャよかった……睦月は善人というか…まあ悪人ではないんだけど、煮えきらねえ~~~!!!とも思うし、でも正しさを求めたり誠実でありたいという願望が歪なほど描写されてるので(そこで笑心の親友にそれバラすの!!!??何!!??)バランス取れるようになるとイイネ…てかんじ……。

いや、でも睦月さぁ…大学院生の時に中学生だか高校生の紺と初めての夜を迎えた的なこと書いてあったんだけど、おまえそれ犯罪じゃねえの!!??と思ったので紺が絡むと倫理観バグるのかもしれないな…?いや誠実さが倫理観や道徳観や遵法精神を超えるタイプなのか…?
しかし親からの圧力とか考えるとそういう思考になってしまうのか……??それも個性…。

私は会話やエピソードからなんの疑いも無く99%睦紺だと思ってるんだけどまあ人様の家のことなのでそこはまあ別に……きらきらひかるは『きのう何食べた?』ではないので…(きのう何食べた?は作者の描いたR18版同人誌があります)いやなんの疑いも無く睦紺だと思っているけど……。

笑子の父親が、ゲイが発覚した睦月に対して詐欺じゃんこんなのおんなおとこじゃんとか言ってキレたときに、オカマとホモ(作中表現)は違うんだけど…ってなったり笑子自身も最初あんまりわかってなくて毎回睦月がそれは違うよって説明したりなど今読んでもそこまでストレスが無くてよかったんだけど、笑子の依存症と躁鬱(双極性障害)に関しては精神科医の対応含めてどうにもやりようが無くてしんどすぎたな…登場人物たちの理解はわりとあったのでそこはよかったけど睦月の母親が同性愛は性的嗜好だけど精神病は遺伝するやんけって言うくだりとかウワ……だったし(あえて理解無いかんじの描写だったが)

何年か前に読んだ新しめの本で今どき精神障害やLGBTQに関してこの認識!!???商業で!!!???通るんだ!!!????てなって破り捨てたくなった小説と比べるとめちゃめちゃちゃんとしてたのでちゃんとしてるなあ……とおもったりなどした。ポケベルとかの時代なのに……。

個人的に笑子の純粋なところというか真っ直ぐなところというか…全身で嘘のつけない人みたいなところが見ていて痛々しかったので、本人が嘘をつくことをなんとも思ってないという認識なのはまあ小気味良かったかな…実際にストレスがかかっていないわけではないと思うけど。
アルコール依存症だから情緒不安定というより情緒不安定で精神的にも不安定だからこそアルコール依存症になってるんだろうな~という説得力。

世の中と折り合いをつけるのがとても困難そうな人……銀色のライオン………。
七夕の短冊、本当に一番大事で叶えたい願いは書いたら叶わなくなりそうとかいうところとか、遊園地で友達の子供のしっとりした手に触れてから生き物に興味を持ち始めたりとかなんか、すごい、めちゃくちゃ可愛らしい人だよ笑子ちゃん……4ヶ月も約束を守っていたのかと思うとギュッとなる…。
ポケベル詐欺エピソードとか医者の睦月を悲しませずに勝手に死ねばいいのにとか患者に対してすごいこと考えてるのもエゴくて微笑ましいな…☺と思って読んでいたからこそ、その呼び出しが嘘だったとわかった時にどれほど笑子が傷ついたかも伝わってきて小説…うま……となった(語彙)

笑子、たぶん子供がそのまま大人になってしまったような人なのかなあと思う。良くも悪くもすごく子供っぽくて、魅力も欠点も「子供のような」と形容するのが相応しいキャラクターというかんじ。
親も姑も親友もみんな幼い子供に対してあんなこと言ってるのかと思うとそりゃ駄目だよ…ってかんじです……。
睦月は医者だし、紺も子供のようなところがあるし……(映画館で人にそういう嫌がらせするのやめろマジでやめろやクソ野郎と思った)気が合って良かったな…。

睦月の患者見学エピソードで、人が変わらずにいることは無理だと示しておいてからアレソレを挟んでのアニバーサリーというのがなんか…彼らにあるのは今この瞬間なんだよな~~~!!!と思わせる刹那的な寂しさがありつつ、長く続く三人の愛を信じたい……という気持ちも湧いてしまい…でも蛮勇が長引くのも妙かなあとか思って胸が苦しい話。
だって本当にあまりにも繊細すぎるんだもん……お互いがお互いをあんなに思い合ってるのにそれが誰かを追い詰めているわけで……世間がもう少し変われば三人の変わらない生活のハードルはグッと下がるだろうけど続けていくのはめちゃくちゃ気力や根気や体力が必要だろうしみんなどこか危なっかしいし……。

そういえば鉢植えに紅茶とかお酒とかドバドバあげてもいいものなのか???と思った。やってもいいものならちょっと真似したいと思ってしまった。

きらきらひかる、愛しさとせつなさしかない…心強さがあんまりない ラストだけちょっとある…。記念日にはおじさん(絵)と木も含めたあのメンバーでパーティーを毎年行ってほしい(いやでもあれだけしょっちゅう各実家の家族が顔見に来るならわりとすぐにバレるだろ……とも思うけど)

江國香織は『つめたいよるに』が好きなんだけど(特に初めて読んだ『デューク』が大好き)きらきらひかるの解説で作者が25歳の時に出版された最初の短編集とか書かれてて小説うま………ってまたなった。

睦月が磨いたぴかぴかのお部屋で笑子と紺と三人でお酒飲んでアイス食べて音楽流して絵や星を眺めてぐだぐだ幸せに暮らしてほしい……なんなら電話線抜いて一生モラトリアムしててくれ……(無理……)

 

**ここからケイトウの赤、やなぎの緑**

江國香織 『ぬるい眠り』 | 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/133923/

 

きらきらひかるの十年後?を描いた短編、『ケイトウの赤、やなぎの緑』読んだぞーーー!え!?なんか勝手にハードルをアレしすぎていたからなのか想像より全然よかったんだけど……むしろかなりよかったんだけど…。

はっきり描写された彼らのその後に関してはわりと個人的には言うことが無く……むしろまだ予想よりずっと穏やかでよかった…みたいな……ていうか文章がきらきらひかるに比べて読みにくくてハテナだった。なんか視点がブレる…?というか……。

そもそもなんで突然今頃になってきらきらひかるを読んだかというと、ぼんやり読んでるポリアモリーの本で紹介されてて興味を惹かれたからなので、男女の恋愛ものとしてではなく『ポリアモリーもの』としてのフィルターが最初からかかっていたんだよね。
だから続編の感想はポリアモリーの本に出てきたやつ!ってなったし、紺が、自分と睦月と笑子ちゃんのこと誰にもわかりゃしない!!ってなるとことかがめちゃくちゃ良かったですね……。
彼らの選択に作中それぞれの感想や意見が出てくるけどそのどれもだと私は思うし……というか三人の愛の形がもう恋人という枠組みに収まらなくなってしまったのではないかと思った…。
恋愛というものを小さなものや下に見ているわけではなく、星型やハート型の型抜きみたく恋人、夫婦、友人みたいな見えない枠組みが世の中にあって、睦月と笑子と紺の三人がそれぞれを大事にして長い年月を過ごすうち自分達二人にその枠組み自体が無いことのほうが紺にとって二人を尊重することに変化したというか…。
ケイトウの赤、「愉しいのが一番」ていうのは本当にそれなんだけど、不倫!不倫!離婚!再婚!不倫!複数愛!みたいな話自体にグゲ…ってなる人はそういう刹那的な快楽ばっか追い求める奴らのせいでこっちはなー!こっちはなーーー!!!ってなるとも思うんだよな…(※ちょうどこれ読んだ時期、芸能人の不倫報道がうるさくて、それをポリアモリーだとかなんとか言う人がいたので違うだろう…と思った記録です)

でもきらきらひかるが永遠を望み祈る話ならケイトウの赤、やなぎの緑は永遠などどこにも無いということを突きつけられる話なのでそれはしんどいね……一応前作で変化についての兆しというか予感の伏線があったから受け入れられるけど。むしろこの10年後どうなってるのかわかんないみたいなかんじだし。

その家の方針とかにもよるし一番は人によるんだろうけど、続編は00年代だか10年代の小説だからか今作に登場した同性愛者のキャラクターの一人は家族全員から「そういうこともあるよね~」的な扱いを受けていたので、やっぱり世の中!!立ち止まることなくどんどん良くしていきたいよな!!!!となった。良くして行きましょう。

途中でちょこちょこ挟まれるポリアモリーの本はこれのことです。これも面白かった!

 

ポリアモリー 複数の愛を生きる – 平凡社
https://www.heibonsha.co.jp/book/b198988.html

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