イーライ・イーストン著『狼と駆ける大地』(月吠えシリーズ5巻)感想

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『狼と駆ける大地』
イーライ・イーストン 著/冬斗亜紀 翻訳/麻々原絵里依 イラスト

■月吠えシリーズ1巻〜4巻までの感想はコチラ

▼続きからネタバレ感想▼

 

月吠えシリーズは現代のアメリカが舞台なので、保守的な人物やホモフォビアのキツイ人物が出てきても「この人は保守的な人物である」など、作品としてのステイトメントが作中でもきちんとあって、なので所謂『禁断の同性愛』的なエピソードって見たことなかったと思うんだけど、5巻はだから、そう来たか〜!てかんじだった。

 

ジウスとティモの恋愛描写は大変良かったし、ヒッティが元気になったのはとても嬉しい。
タイトルにもなってる、大地を駆けるエピソードが本当に楽しそう&気持ちよさそうで、これが最後の演説の説得力にもなっている。
二人(+ヒッティ)でテレビを見るエピソード可愛くて好き。
プラネットアースとかナショナルジオグラフィックはすごい。

犬と犬のカップルの話なのでどうかな〜と思ってたけど、生まれも育ちも常識もまったく違うお互いの価値観や人間性(犬性)に触れて、それぞれが化学反応を起こして変化して絆を深めていく部分は人と犬のカップルともそう変わりなく、好きなやつだった。

医療のシーンはK2を読んでいるので「ギュッ」てなった。
死ぬかもしれなくても治せるもんなら治りたいよな〜〜〜!!!

これまでのカップル達が仲良くやってる描写が出てくるとニコニコ笑顔になれるし、マッドクリークの事業が上手く行ってるらしいこともわかってひとまず良かった。

 

ストーリーが相変わらず上手くて、今回は『狼のアルファ』がテーマになっててティモとジウスの恋が焦れたり進展する際にも重要なファクターになっている。

私はてっきりジウス×ティモかと思って読んでいたのでアルファの話で役割も決まるのなるほどな〜でした。
でもまあジウスの性格的に(ティモにしてみたら)そんな鬼畜なことするわけないんだよな。
えっじゃあジウスって失踪するタイプの受けじゃん!

 

ジウスがランスと仲良いのも良かったね。幼なじみ特有の距離感は見ていて安心する。
ジウスの両親がジウスだけでなく子どもを慈しんでいるのも伝わってきて良かった。

リリーがいたらもっと拗れてた話だと思うんだけど(ティモとの相性が最悪そう!!!)まさかの不在でちょっと笑いました。
リリー、居ても居なくても存在感がでかすぎる。トリックスターだなあ…。

 

オチは多分、すごく『良い』話なんだろうということもわかる。わかるんだけど、生殖のために16名のクイックがマッドクリークからアラスカに行くのがなんかグロく見えてしまって、いやまあ絶滅の危機だし、動物園の檻の話もしているため、彼らの選択が自由意志であることも担保されているしそこは丁寧なんだけど、こう…代理出産の話も含めてウーン…てなってしまったので、個人的にちょっとグロいな………と思ってしまうテーマのお話だった。

まあ彼らの半分は『犬』なので、そんなに悩まなくてもいいのかもしれないんだけど。

医療についても、若干のエスノセントリズムが感じられ、いやでも治って良かったんだよな……の狭間でウーム難しい話だ………になってる。

医療費の積立は大事なことだな〜…。

 

近親婚を繰り返してきた結果、新生児が産まれなくなったり育たなくなってしまったキミッグがとにかくドン詰まりすぎて、ティモとジウスが出会わなければ遠くない未来にヒッティのみならずキミッグ全体が滅んでいたことは確かで、なので、だったらマッドクリークとの邂逅は彼らにとって僥倖だったんだろうと思うんだけど、なんだろうな!?引っかかりがあるのは……ロジックは通ってるし、描写も過不足ないし、お話も面白かった。
だからこれは私の好みの問題なんだよな……?

 

キミッグの流儀だと、ジウスの体当たりすぎる告白も『雄同士のマウント行為』と取られて「バカにするな」とキレられるし、しかしその価値観は古臭いというよりも、全体的に現代にも通じるマッチョイズムや『有毒な男性性』を描いたエピソードの数々にも見えてそこらへんもすごく面白かったんだよな。
バランス的に、愚かな家父長制というよりは、モチーフになってる『狼のアルファ』が効いているので巧いな〜〜〜!てなってた。

でもやっぱ……「こんなに沢山の健康で生殖可能な男女を連れてきたんだから、自分は男とつがいになる権利がある(だから同性愛を認めろ)」は危ういよな〜〜〜〜!!!!????

いやマッチョ思想的にはそうなるんだろうけど、そこが等価交換になってるのが個人的に好きじゃないポイントっていうか、でもそういう考え方をする奴らだし、仕方ないという背景(キミッグのドン詰まり)も描かれてたし、そうなるよな〜…。

誰であっても性別とか関係なく好きな人とつがいになっていいんだよというメッセージも発されてはいるし………。いやでも「マッドクリークは子沢山だからそれが許されるんだ」とも語られているため、ウーン…!

でも「どんなに愛し合っていても法律で家族と認められていなければ出来ない事も沢山あるので書類の上でも婚姻の契約を結んだんだよ!」が普通に出てくるの、羨ましいな〜〜〜〜。

気候変動の話とかも出てくるしな……。

 

4巻までのマッドクリークは、ストーリー的にもメタ的にも間違いなくマイノリティの集団で、5巻でもそれはそこまで変わらないんだけど、ラヴの仕事が成功して人が沢山増えてみんなが仕事を手にして、キミッグという更に少ないクイック達が登場したことで彼らの存在自体がちょっと変化したり多面的になってて、怖いけど面白かった。
ここらへんがジウスがマッドクリークを苦手に思うようになった理由にもなってて、とにかく構成とかがテクニカルなんだよな…。

あと大事なことだけど翻訳なのか?がむちゃくちゃ読みやすい。
するする読める。

 

しかし月吠えシリーズは毎回こんな素晴らしい奴らに愛されたり信頼されたり寄り添ってもらえるほどの価値がニンゲンにあるのか……!?てなって心がグラグラしてしまう。
犬の愛、純真で健気で大きすぎる。

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