劇場アニメーション『犬王』感想※ログ追記

湯浅監督&野木脚本ということで配信見るの超楽しみにしてた!アマプラに来たので早速見ました。

原作の記憶がおぼろげなので当時の感想メモを探して読み返したり。
以下原作の感想メモ断片と映画の雑感。

 

2022年6月10日

平家物語 犬王の巻 :古川 日出男 | 河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309418551/
読んだ

犬王が「醜」を捨て「美」を取り戻していくところ、どろろの百鬼丸を思い出したんだけど(特に新アニメ)なんというか…ウ〜ン……!
いやでも権力は怖いな… 二人の心の触れ合いというかやり取りが詳細に書かれるタイプの話じゃないけど最後のとこ良かったな… 映画はどんなかんじだろうな〜 配信〜!

物語ること、伝えることには反体制・反権力的な力があり、「普通」ではない醜さは恐れられ排除されるが、同じものでも優れた美しさはいともたやすく権力に取り込まれる 最初に振るっていたはずの反骨的な力は、権力によって簡単に奪われる…、が…!的な話のスピード感と無情感(無常観)だった…

犬王、先祖やら父親やらの都合で世間一般でいうところの『不具』とされる状態になった人達が、持ってるものを全部使って、才と熱と知略で自分を取り戻しながら叛逆する話というか、でも情念とか復讐っぽさは無いのですごく不思議な味わいの話なんだよな…語り口のせいかな… なんか妙に寂しい話だった

反骨的なやつが、(本人の気持ちはともかく)最終的に権力や構造に取り込まれたり、逆に弾き出されるのがなんか…ムカつく……?みたいな… あと愚かな民のことが全然信じられないので、何もかもにあんまり希望が持てないんだよな…

ていうか間違いなく『平家物語』なのですごいと思う

犬王の寂しさ、プロメアで最後バーニッシュが力を失うときに感じた寂しさにも似ている… 犬王はバーニッシュというよりは百鬼丸なので、そもそもは違うんだけど

犬王、アニメ平家物語と大河ドラマ鎌倉殿の13人を見ていなかったら半分以上理解できなかったと思う

ていうか去年めちゃくちゃ平家滅んでるな!

 

映画、すごく良かった。

記憶にあるのと少し設定が違ってたっぽいんだけど、見やすく整理されてたように思う。
まさか犬王と友魚のパフォーマンスがこんな形で表現されるとはってかんじでアニメーションが面白すぎた。

私はロックとかの歴史に全然詳しくないので、あっなんかよく見るやつ!!どこかで見たことある動き!演出!これはバレエとか体操!?ブレイクダンス!?みたいな解像度の低さなんだけどそれでも面白かった。
そんなかんじでライブシーンの犬王の動きはずーっと面白かったんだけど、友有だけのターンは途中でちょっと飽きちゃった。

感想を書きそびれているんだけど、実はワンピースのウタちゃんの映画も配信が始まった頃に見ており、それもライブのシーンがずいぶん退屈に感じられてしまったので、映画館で見ればまた違うのかもしれないけど私はこういうのあんまり得意じゃないんだろうな。

でもそれ以外は本当にずっと良かった。

ポップでロックで楽しくて、犬王と友魚の関係性とか描写もかなりウェットに感じられて、あっこれはボーイズラブのやつ……!!!!!と大興奮してしまった。
友有の遊女装とかも驚くほどセクシーでびびりました。
筋肉バキバキになってく犬王もすごかった。あれだけ動けるんだからそれはそうなのか…??そんな二人の体格差にも萌えるなどした。

二人の関係性含めてほんのりクィア映画っぽさもあるのかな。さっぱりした友情物語としても完璧なんだけど。
自分で選んだ名前を名乗るシーンはどれも最高に良かったし、二人の出会いと再会するシーンも大好き。ここらへんは原作でも好きなシーンですね。

犬王の父親、映画はたいそうセクシーで最悪な仕上がりになっててそこもめちゃめちゃ良かった。大興奮ポイントその2。
仮面の怖さも想像してたのと違う怖さで、というか仮面以外も想像がどうとかそういうレベルじゃなくて本当に面白かった。
そ、そんな琵琶いいんだ!!!???ステージの技術すごくない!!?実際あれって当時の技術で再現できるのかな…?

ライブシーンの観客の熱狂や楽しそうな雰囲気も伝わってきて良かった。
それだけに、無音のシーンの虚しさは、綺麗だけどこれまでの楽しいライブの型破り感が一気に死んでてキツかったな。
こういった映像としてのメリハリがあるぶん、楽しさとか悲しさがよりダイレクトに感じられたのかも。

原作を読んで複雑に感じられた部分が景気よくまとめられたり削ぎ落とされているので、両方を頭に入れることでようやく補われる部分があり、自分の場合は原作を読んだ上で映画を見ることが出来たのは良かったと思う。

ただ、それでなのか、個人的には権力に対する眼差しが原作よりもゆるくなっているような気がした。

でも、最近ちょうどジェーン・スーの野木亜紀子インタビューを読み返してちょっと色々考えていて、『犬王』における関係性とか設定の原作とちょっと違うっぽい部分を見ると、将軍の言うことを良い笑顔で受け入れた犬王の姿が少し野木さんの創作の姿勢に重なって見えてしまった(まあ映画は監督とか他のスタッフさんが大勢関わっているので、脚本家一人の創作姿勢と内容を被せて考えるのも短絡的だなあと思う)

大衆に向けられた『わかりやすさ』とか『親しみやすさ』とか『飲みくだしやすさ』を強化することで、見る人にエンタメ作品を通して密やかなメッセージを発信しているようなかんじ(陰謀論???)

 

闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由 (文春e-book)

権力者のお仕着せではなく、民衆によって流行した「(友有が語る)犬王の物語」として見るなら原作のほうが尖っていたし、音は出ないけど何故かロックっぽかったように思う。
その代わり映画は音楽とか色とか動きの担う要素が多くて、大衆向けエンタメ作品としてわかりやすく、よく仕上がっている。

芸術無罪とか無謬ぽい部分は気になったけど、そこはどちらかというとメディアによる差異なのかなと思う。
その点も、これが『劇場映画』であることにも意味が乗っていて良い。まあ私は家で見てるんですが…。

芸術の持つ力とか責任については結構ずっと考えていて、本来は反体制・反権力的なものや、個人・もしくは民衆のためにあったはずのものが権威や権力に利用されてしまうことの恐ろしさは、民衆の無邪気さや無自覚さを含めて、考えれば考えるほど怖い。

でも『犬王』は、権力者によって失われてしまった人の声や名前、活動、表現、評価なんかが600年の時を超えてエンタメ作品として蘇る可能性を十二分に描いてくれてるんだよな。
私はそこらへんはシンプルに尊いなあと思うし、劇場版の説得力がすさまじいので、原作よりも勇気が貰えたような気がする。
アニメ平家物語のエンディング『光るとき』が好きなのもここらへんの理由が大きい。

犬王、良し悪しとは別に、原作の終盤からラストで私が感じた無常感というか寂寥感は映画ではあまり感じられなかったし、とにかくあらゆる意味で『華やいだメディアミックス』だったな。

 

TVアニメ「平家物語」オープニング映像:羊文学「光るとき」

2023年5月20日 23:13

犬王、友魚の父親が成仏するのにかかった年月と、犬王が友魚を見つけ出すまでにかかった年月を考えて、ろ、600年!!!!?????てなって改めてびっくりしてしまった
良〜〜〜!?🥳じゃん


2023年5月21日 12:40

友有の歯の整ってないかんじとかもすごく良くて、キャラクターの体をめいっぱい使うパフォーマンスが表現の軸になっているだけあって身体描写にも色々なものが詰まっていて、『均整のとれた』『平均的な』『一般的な』『正しい美しさ』と評されがちなもの以外も大変セクシーだった

最たるものが友魚と出会った頃の犬王であることを思うとそれはそう

『正常な美しさ』を取り戻した犬王の顔が不気味な雰囲気で描かれてるのも貼り付いたような表情のせいだけじゃないんだよな…
政治とか権力に取り込まれて型に嵌まった美しさをやる犬王に対して、見ている人が不気味さとかしんどさをおぼえるように画面が作られていた……んだと思う

すべての表現は権力に対抗しうる力と可能性を秘めているけど、目立ったり人気を集めてしまうとあっという間に飲み込まれて逆に権威に利用されるリスクにもつね晒されており、そうならないためには表現者は命と信念を賭ける必要があり、しかし貫き通したところで……、みたいな侘しさと、それでも人の世が続く限りはどういう形であっても存在の証は残るし、時代が移り変わって価値観や環境が変化すれば、いつかは元の形で見つけられて再評価されることもあるという話をしているので、ぴえん……てなっちゃうよ犬王

アンナチュラルにも出てきた「あったことを無かったことにするんですか?」という問いも思い出される
強者にとって都合よく消されたりカジュアルに改竄される『真実』に対してめちゃくちゃ真摯な脚本だ……

犬王、自分で決めた自分の名前を名乗る『異形』が本当に楽しそうで、これを奪う権利を持ってる存在なんてこの世に無くないですか!!??
世間一般の価値観や様式において『不具』と判定されがちな奴らが、自分らしさを炸裂させてこんなに楽しくやってるのに、なんで権力はそれを奪って自分のものにしたらつまらない型に嵌めてそれを『正常』な『秩序』とか言いやがるんですか!!??

という感情をめちゃくちゃ揺さぶる映画だと思うんだけど、これは受信者が私だから特別そう感じるのか、それとも作り手の意図したところなのかはわからない

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