
金田一耕助シリーズの2作目です。以下ネタバレ。
というかこれまでに読んだ金田一耕助シリーズはどれもネタバレをします。
元来島の住民というものは、きわめて排他心が強いうえに、環境に制約されるところも多いから、めったに他の島々と縁組をしないものである。
(日本の話してる…?)
いってみれば全島がひとつの大家族みたいなもので、そういうところへ他国もんのお巡りさんが入り込んだところで、なにができますものか。なにか事件が起きると、全島一致結束してあたるから、お巡りさんも手の下しようがない」
(日本の話か…?)
ふつうの島でさえそのとおりだから、ましてや獄門島のような特殊な島、海賊の末よ、流人の子孫よと、まわりの島々から擯斥されるところからつねに他国人に対して、人一倍はげしい敵意をいだいているこの島で、もしも事件が起こった場合、警察当局がどのように手を焼くか、それは思いなかばに過ぎるものがあるだろう
「日本はでっかい獄門島」ってコト………!!!???
本陣殺人事件もそういうとこあったけど、かなり縮図の話をしているものだから感心してしまった。
『獄門島』は、金田一耕助シリーズの2作目で、1作目『本陣殺人事件』の大活躍から約10年後の話なんだけど、この10年、金田一耕助が25歳〜35歳の間どこでどんな活躍をしていたか?というと「人生で一番大切なこの期間は空白!戦争のせいでな〜〜〜〜んにも出来なかった!!!!」ということが語られてて胃にズシリと来た。
まあそういう部分もあるから磯川警部との再会に涙を流す金田一耕助を見てこっちも泣けちゃったりするんだけど。
パトロンの久保銀蔵もちょっとだけど美味しい出番があって嬉しかったな。
金田一耕助っておっさんにモテモテすぎる。助かります。
こんな怪しい奴が犯人なわけないだろうけど提灯の場面もネットリ描写されてたし、きっとこの人が犯人なんだろうなあ…と当たりをつけながら読んでた人物が犯人(1/3)だったので1/3だけ喜んだ。
しかし全体に漂うミソジニーのやばさにびびる読者を置いてけぼりにしながら犯人(1/3)の凄さや格好良さがあんまり語られると「フーン……」てなってしまう。
他の作品でもそうだったけど「見た目ぐらいしか取り柄のない迷惑アホ女は若いうちに死ぬべき」みたいな思想が強すぎるだろ。
お勝さんのビジュアル言及もクソだし。
金田一たちが摺鉢山で山狩りに勤しんでいた頃、本鬼頭の家でほのぼのホモソーシャルトークに興じる了沢くんとか「昭和って最悪すぎる……」てなった。今もこんなかんじなのか???最悪すぎる!
ただ事件に関しては「この因習島の封建制こそが悪である」とも語られているのでまあ今でも全然読めるバランスになっているというか、今もこのレベルかと思うとこの世はクソなんですが……。
ナチュラル女性蔑視にはイライラするけど横溝正史が家父長制とか天皇制にムカついてるのはめちゃくちゃ伝わってくるんだよな。
それにしても三人殺された連続殺人事件の犯人がそれぞれ別って面白すぎない!?
村長と医者はあんまりキャラ立ってなかったけど、外から来た有名な探偵に対してフェアプレイを貫こうとした和尚の犯人としての格が謎に高すぎるし、そんな立派っぽい人の死因と死に様が「あーあ」ってかんじなのが虚しくてとても良かった。
見立て殺人に関しては嘉右衛門のアイデアだったにしても実行して辻褄合わせに苦心する犯人達が大変そうだったけど「季語が違うが…」って思わず言葉にしちゃうのちょっと面白かった。
白竜丸の中で勝手に運命を感じちゃった部分が特に理解できなさ高くて、やっぱ動機が秀逸なんだよな…。
嘉右衛門の遺言はマジでカスだと思う。
犬神佐兵衛にしてもだけど「下手に大きな権力を手に入れてしまった爺の妄執って害悪!!!!!」って話をずっとしているのか…?
海賊が「帰ってきた一(ひとし)では……?」というミスリードにはまんまと乗せられた。早苗さんが勘違いするのも無理はない。
いや違うな、早苗さんが変な勘違いするから読者もミスリードに乗せられたんだよな!?
「連続殺人事件が起こる予定の島なのに、第一の事件から厄介な探偵が島をうろついているため、第二の事件を起こすのが困難である。探偵の格を落とすことなく第二の事件を起こすにはどういう展開が必要か?」に対して横溝正史の出した答えが「探偵がお巡りさんに突然疑われて一晩牢屋に閉じ込められている間に新たな事件を起こす」なの、仲良くなった人にだまし討ちされた金田一耕助が可哀想で笑ってしまったけど見事だった。
おまけに事件当時のアリバイまで確保できちゃったの上手くてよかった。
金田一が大物犯罪者ではなく名探偵であることがわかってからの清水さんが気の毒すぎるんだけど、浅見光彦シリーズもこういうとこあるよね。もっと言えば時代劇とかもそうか。
最初は傷ついてたけどだんだん面白くなってきちゃって留置所でのんびりする金田一耕助は図太くて可愛い。
これ映画は犯人が原作と違ったらしいけど、誰でどういうかんじだったんだろう。気になります。
ラスト、金田一耕助が鬼頭早苗に島を出ないか誘ったのって、戦友の千万太に頼まれていたにもかかわらず事件を未然に防ぐことが出来なかったことに責任を感じて人の良さから出た言葉かと思ってたからプロポーズってどこ情報よ!?(Wikipedia)てなっちゃったけど時代が時代だからな……。
でもそこに恋愛感情とか特別な感情があるんだったらもう少し金田一から早苗に対するアプローチとか描写があってほしかったよな~と思うので私の現時点での解釈は「責任感からの言葉だった」説を通したい。
だって早苗さんよりも和尚とか清水さんとか清公とのほうが仲良かったし心触れ合ってたじゃん!!!!!
そういえば金田一耕助がアメリカのカレッジ時代に夜間の病院で看護師のアルバイトしてた話も初めて知ったのでへーーーーー!!!!!てなった。
それに加えて戦場で多くの死を見てきたので、事件の遺体の状態がどんなものなのかちょっとわかるらしい。
これからの金田一耕助シリーズに期待すること、若く美しい女だけではなく若く美しい男もちょっと無慚に殺してみてほしい。犬神家の一族のやつは美しくなかったから駄目です。
鵜飼の扱いも肩透かしだったもんな~~~!
いやでもああいう島で外から来た若く美しい男は利用されて搾取されて用が済んだら追い出されるみたいな部分はかなりグロテスクな現実味があったか。うーむ。
しかしみんなインターネットもない時代に色んなことよく知ってるもんだなあ……。
なにげに床屋の清公が物語の立役者だったな。
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